デザイナー林柳江が東京新聞で連載中のコラム 「インテリアわたし流」 をご紹介しています。
マンションに春薫らす
晴れた日の午後、信号待ちのタクシーのラジオから子どもたちが歌う「春の小川」が流れてきた。ぼんやり聞いているうちに小学校のころの写生の時間が浮かんできた。
花びらが散る桜の下で一心に描いている。傍に「さらさら」と小川が流れていたように思うけど記憶はあいまい。でも、思わず目を細めてしまうような懐かしさが充ちてくる。クレヨンの匂いとお弁当の蓋をあけたときの、玉子とお醤油のふわっとした匂いも。いつもお弁当には片目玉焼きと海苔。あのころ食の細かった私のお気に入りだった。

インテリアを支える大小2つの花器
用事を終えて家にもどると、急に部屋のあちこちのほこりが目につき、思わず仕事の段取りもそっちのけで拭き掃除を始めるともう止まらない。せっせと窓ガラスを磨き、窓のブラインドもすっかり綺麗になってそれは気持ちの良いこと。すっきりと片付いた部屋に、今度は花を添えたくなって近くの花屋さんに向かう。こんな気分のときのために?わが家には大きな花器が用意してある。高さ六十センチと四十センチの透明ガラスのもの。かなり大型だが思い切って盛大に飾りたくて大小、二つ並べてつかう。猫の額ほどの庭にも、広いベランダにも恵まれないマンション暮らしでは、花々が咲き乱れる庭園は望むべくも無いが、たっぷりと高く活けた枝花が春の季節の瑞々しさを運んでくれる。
東京新聞 生活面 3月17日 デザイナー 林柳江




