デザイナー林柳江が東京新聞で連載中のコラム 「インテリアわたし流」 をご紹介しています。
重要な家事手伝い
ちょっと腰掛けたいな、と思う。例えばキッチンでのわずかな五、六分、圧力鍋の高圧ピンが上がるまでの加熱時間だったり、引き出しの中を整理するときだったり、家事の合間にチョイ掛けできる椅子がほしくて購入したのが、このハンティングスツール。

ちょっと腰掛けるのに便利なハンティングスツール㊨とオットマン
椅子に坐って家事となると、なにか不精をしているようで居心地が悪いが、この椅子はブナ材の脚に厚いヌメ革の座で、脚をたたんで共の皮ひもを肩に掛ければ、アウトドアにもお供する。座面の高さが四十五㌢なのでキッチンの調理には低すぎるが、ソファの脇で新聞を乗せたり、念入りな歯磨きには洗面所に連れて行ったり、お役立ち度はしっかりと高く、一㌔を切る軽さで扱い易さも上々。
次なる椅子はオットマンと呼ばれる足のせで、プチポワン(刺繍)風の優雅なもの。高さは二十二㌢で本棚の前が定席。座り込んで晩御飯の献立を探したり、踏み台になったり、でこれも重宝だが、一番ぴったり決まるのは古新聞を束ねるとき。まさにどっかり坐って一カ月分を整理する。三十年前に暮らしていた香港は九龍の、建て込んだ隘路の石段でタバコやコーラ、なんでもありの果物屋の夫婦がこんな低い椅子をもちだして昼ご飯をかき込んでいたっけ。脇の電気釜と食卓代わりの平板に三品もお采が並んでいた。懐かしい空気がよみがえる私の好きなひとときだ。
東京新聞 生活面 11月26日 デザイナー 林柳江




