デザイナー林柳江が東京新聞で連載中のコラム 「インテリアわたし流」 をご紹介しています。
確かなものを見極めて
「もう、ものは要らない。これからはスッキリ暮らしたいのよ。」その言葉どおりに、それは見事にものを手放した女性がいた。「そんなに急に」と周りがはらはらするのを横目に、どこにそんなエネルギーがあるのかと驚くほど手際良く、半年足らずで住み慣れた家も手放し、小さな住まいを終の住処にと移り住んだのは七十代半ばでのこと。
さて私たちはどうだろう。若い時分は高度成長の真っただ中。憧れのものが溢れ、「欲しい、欲しい」にかられた時代を過ぎ越えて、今は平安な心持ちといったところか。肩の力が抜けて楽にものが見えるようになったように思う。
いままで口にしてきた様々な食べ物、その味の記憶を透過して味わうからこそ、ほんとうに美味しいものはシンプルな炊きたてのご飯になるのだろう。インテリアも同じこと。あれが良い、これが素敵と、勢いに任せて手に入れてきたのも、確かなものを見極めるための回り道だったと思う。
これからは身の丈にあったほどの良さで過ごしたいもの。ものの見方が上手な「見巧者」に近づき、普段の暮らしから愉しみを見出していきたい。

鳥かごのような照明を発見。インテリアはこんな出会いも愉しみのひとつ。
■協力先
≫ザ・コンランショップ
東京新聞 生活面 9月22日 デザイナー 林柳江
※「インテリアわたし流」は今回で終了となります。
デザイナー林柳江が東京新聞で連載中のコラム 「インテリアわたし流」 をご紹介しています。
収納は奥行きが大切
「あれ、どこに行ったんだろ」。ものが勝手にどこかに動いたわけじゃなくて、どこに入れたのか忘れている。要は、どこに何をどうしまうのか、私なりのルールにのっとって片付けていないから。収納のルールが定まっていれば、後は量の問題。筋道立てて論理的に進められる。
出産で家事に手が回らず、手伝いにきてもらったことがある。困ったのは家事のルール、特に何をどこにしまうのか、収納のルールを他人にきちんと伝えられず困った。

さて収納スペースの確保だが「どれくらい必要ですか?」と聞くと、ほとんどの方が「この位かしら」と左右に手を広げる。しかし、鍵となるのは「奥行き」。15センチ、25センチ、35センチ、45センチ、60センチ、80センチで考える。15センチあれば文庫本、新書が納まり、粉石鹸の箱やトイレットペーパーなど日常のこまごまとしたものがしまえる。最大寸法の80センチが必要なのは、座布団や布団。押し入れの奥行きだ。
奥行きが深いところは、蛍光灯を一本設備しておくと手暗がりがなく、探しやすい。
収納の方法はその人によるところ。スペースの確保はお手伝いできるが、良き収納は独自の収納ルールがあってこそ。気力、体力が衰えないうちにしっかり身に付けたいと思う。
■協力先
≫WOODONE
東京新聞 生活面 9月8日 デザイナー 林柳江
デザイナー林柳江が東京新聞で連載中のコラム 「インテリアわたし流」 をご紹介しています。
調湿・消臭・DIYにも
「無作為の作為で」と言われて途方にくれた。新築の全室を白い漆喰壁で仕上げる計画だ。施主である70代のご夫妻の見識がこの冒頭の言葉に込められている。隅から隅までピーンと真っ平らに仕上げる技術こそを誇る左官職人に、コテ跡を残す「なまくら」な壁を求めるのは酷なこと。親方は腕組みして絶句、しかし数週間後に畳大の塗装サンプルが現場に運び込まれ、ご夫妻ともども入念に見比べて、「ここの、この感じで」と黄色いチョークで囲んだ箇所を手本に、塗装が始まった。
表情の豊かさはもちろん、あの心地よさは空気を吸放出する性質から、調湿性や消臭性などが期待され、今また、漆喰を選ぶ住まいも多い。

リフォームでリビングを漆喰壁にしたら、すっかり気に入り、間近で職人さんの仕事を見ているうちに、今度は自分たちでやってみたいと漆喰の講習会に参加、家族でキッチンの壁を仕上げた例もある。素人では扱いが難しそうな漆喰だが、自分たちの手わざを生かして住まいを作る、DIYを楽しむライフスタイルにはうってつけの素材だ。
さて、ポイントは。壁面だけでなく、天井面も漆喰で仕上げれば、さらに効果を発揮できる。また、後から釘を打つとヒビが入ることもあるので、絵を掛ける場合にはあらかじめピクチャーレールを設けること。
■協力先
≫自然塗創空間
東京新聞 生活面 8月25日 デザイナー 林柳江
デザイナー林柳江が東京新聞で連載中のコラム 「インテリアわたし流」 をご紹介しています。
住まいは「木」から
散策を兼ねて、「江戸東京たてもの園」に移築された建築家・前川国男の自邸を見学してきた。戦時中の建築でもあり、わずか三十坪の住まいだが、様々な工夫が散りばめられている。
日本の住まいの要は「木」の扱いにある。ここではブナ材のフローリングに漆喰の壁。扉は松材で、木目が浮き立つ「うづくり」で仕上げてあり、手触りが心地よい。今どきの木目が印刷された室内扉では味わえない感触だ。
一脚の木の椅子を選ぶときも、住まいの中の木質材の樹種や仕上げと無縁ではない。家づくりの過程で悩む、お金の掛けどころは、床材が第一候補だろう。床は文字通り、生活を足元から支える基盤だから、耐久性が高く、重い家具を置いても安定していることが基本条件。滑りにくくて足触りが良いことも重要だ。

木のフローリングで一般的なのはナラ材、ブナ材。中・濃・淡の色合いから選ばれることが多いが、「木」の持ち味に視野を拡げるなら、ウォルナットやチーク、ブラックチェリーなどが挙げられる。いずれも樹種特有の色と木目が美しく、自然と日々の暮らしに響いてくる。
ものごとは選択肢の少ない順に決めて、選択肢の多いものをそれに合わせていくのが合理的。インテリアもイメージの基調となる「木」から選び始めたい。
■協力先
≫朝日ウッドテック株式会社
東京新聞 生活面 8月11日 デザイナー 林柳江
デザイナー林柳江が東京新聞で連載中のコラム 「インテリアわたし流」 をご紹介しています。
フローリングに涼感
本当に蒸し暑い。洞爺湖サミットで焦点となったCO2削減の達成以前に、クーラーで冷やすのは身体のほうが先に音を上げるから、極力我慢して扇風機で乗り切ろうと思う。
この時季、気になるのはリビングの床。床のフローリングに素足のあとがつくのが圧暑苦しく、見苦しい。
古い家の廊下は素足でもサラッとしているのは日頃の雑巾がけの成果でもあるが、床材の松や檜が心地よいから。
表面をワックスで仕上げる今様のフローリングではこの木の感触は味わえないが、リビングに置き畳を敷く手がある。